誓いのキスを何度でも
部屋に戻ると、

「おかあさん、サクちゃん転んで顔をぶつけちゃったんだってー」と私に駆け寄り、心配そうな顔を向ける。

「そう。冷やしてる?」

と聞きながら、ダイニングの椅子に座ってタオルで顔を冷やす誠一のタオルをそうっとどけると、頬が赤くなっている。

「大丈夫?」と頬に触れると、

「平気。すぐに治るよ。気にしないで…」と頬に触れた手をキュッと握って、笑顔を見せた。



「セイちゃん、サッカーに行く用意出来た?」と私が誠太郎を振り向くと、

「大丈夫!」とリュックを持ってくる。


「じゃあ、いこうか?今日は俺が運転するよ。
川沿いの公園でいいんだろ?」

「うん!!」と誠太郎はぴょんぴょんと飛び跳ねながら玄関に向かう。

「サッカー終わったら…誠太郎は少しナナコ先輩にお願いして
いっしょに実家に行ってもらえますか?」
とそっと誠一の耳元でいうと、

「もちろん行かせてもらう。
…そんなに顔を近づけられると、結構照れるな…」

照れるところじゃないって、と思いながらも、顔が熱くなるような気がする。

「遅刻しますよ!」と赤くなった顔を伏せ、強い口調で言いながら、水筒や、トートバッグを持って私も玄関に向かう。

玄関の前で私を待っていた誠太郎と指をさして玄関に貼った紙を読む。

「窓閉めよーし。ガスもよーし。留守電よーし。電気消して。
スマホ持った?鍵持った?」

誠太郎と確認していると、


「あ、俺、スマホ、置いて来た。」と誠一が部屋に戻っている。

「はやくうー。」と誠太郎が足踏みをして待つ。

「ごめん、ごめん。この張り紙案外やくにたつな」と誠一は誠太郎に笑いかけた。

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