誓いのキスを何度でも
「確かに、父の跡は継がないと言って家を出てきたところですが…僕は家に戻る気はありません。それは父に話しています。
僕はもう、あの家に自分の人生を奪われたくない。
果歩さんとの人生をやり直したい。」

「私は…誠太郎がいればいいって、今まで思ってきたの。
だから…まだ…
これから、あなたと一緒に生きていきたいか…
よく、わからない。
誠太郎にとっては父親がいたほうがいいのかもしれないけれど…」

「他に…一緒にいたいオトコがいるからか?」
と、誠一が静かに私の瞳を覗く。

「違います。
まだ、そんなふうに思う人はいない。
あの人とは…いずれ、終わると思っていたし…」と私が俯くと、

母が私の顔を驚いた顔で見る。

「果歩、他に好きな人がいるの?」

「そう…かな?
うーん、結婚を前提に交際を申し込まれている人がいるの。
でも、…迷ってる」

「迷ってる時点で、ナシだろ」と誠一が口を出す。

「あなたの事も迷ってるの!
誠太郎の父親だけど、
ずっと離れてて、もう、昔の私達とは違うでしょ!」

「どっちもいい勝負って事だ。
負けないようにしないと」と誠一はクスッと笑う。

やれやれ。
ポジティブなオトコだ。


父は半ば呆れた顔をし、

「果歩、他にも交際を申し込んでいる男がいるのか?
その男の事はまた今度だ。
とりあえず、7年前の顛末は理解できた。
…君の未熟さと果歩の自信のなさと妊娠が重なったのが、別れた原因という事だな。
とりあえず、桜庭君は果歩との未来を考えるなら、君自身の問題を解決しなさい」

と、眉間に手を当てている。

「キチンと考えます。僕の父親は僕の話を聞くとは思えませんが…」と誠一は自嘲気味に答える。

「それでも…向き合ってきなさい。
君が真摯に向き合ったなら…私も認めよう」と父は少し表情を柔らげ、誠一を見つめる。

「はい。
よろしくお願いします。」と深く頭を下げて、誠一はホッとした顔をした。


…お父さん、勝手に認められても困るって。

なんだか…父は誠一を気に入ってしまったのかもしれない…








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