誓いのキスを何度でも
実家を後にし、誠一は車の運転席に座ると
『 secret monkey 』の音楽をかけ、音量を上げる。

「果歩、歌おう」と言われ、ため息をついてから大声で歌った。

どうしたらいいかわからなくて
自分の不甲斐なさにイライラする。

誠一は将来、実家に戻る事になるかもしれない。
その時、私はどうするの?

7年前、ご両親に私自身が否定された事を思い出す。
誠太郎の存在が否定されたり、無理に跡継ぎとして、育てられるような事になったとしたら

私は誠一と再会したことをきっと後悔するだろう。

でも、また、出会ってしまった。



今までそばで見守ってくれたシンさんの気持ちにどう向き合ったらいいの?

5年も身体を重ねたという事実はなくならない。
とても安らいで、私の支えになっていた。
お互い、未来を見ていなかったはずだとしても…




誠一も大声で一緒に歌う。

昔もこんな風に一緒に歌った。

自分の不甲斐なさや、悔しさ、思うようにならない現実。そんなものに負けない。と自分に喝を入れるつもりで、また、立ち上がろうと誓うために…

誠一もきっと家業と外科医として自分のやりたい事との間で思い悩む事がたくさんあったのだと、

もしかしたら…私と同じように愛する人を諦めたという深い喪失感を振り切ろうと…

お互い、この7年間頑張ってきたよね。と

褒めあいたいと、

一緒に過ごせなかった7年間を思った。



私は大声で歌いながら、
難しい顔のままで同じように大声をだして歌いながら運転する誠一の横顔を見つめた。
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