誓いのキスを何度でも
誠太郎は思った通りに学童にたどり着いたときには熱を出していたらしく、
誠一に抱っこされて外来受診にやって来た。

「セイちゃん。アーンして」と本日外来診療担当の内海先生が誠太郎の喉を覗き込む。
付き添いが座る椅子には誠一が座っている。
変な感じだ。

「うーん。喉赤いねえ。熱がまだ出るかも…
抗生剤と、咳と鼻の薬も飲んでね。
セイちゃん、イオン飲料とか麦茶いっぱい飲んで。
お腹は壊してないみたいだからなんでも好きなものを食べて。
…今日は桜庭先生が付き添い?」とふたりに話しかけている。

「あ、あの、私が早退して…」と口を出すと、

「俺じゃ不服なわけ?誠太郎、果歩じゃないとダメ?」と誠一が私を睨んでから、誠太郎に聞いている。

「…サクちゃんでもいいよ。」と誠太郎が誠一と手を繋ぐ。

「果歩ちゃん、桜庭先生に任せたら?
…一応医者なんだからさ…」と内海先生が楽しそうな顔を見せる。

「じゃ、そうういうことで。」と誠一が立つと、誠太郎が抱っこをせがむ。

「誠太郎、自分で歩いたら?」と私が呆れた声を出すと、

「だってフラフラする…」と言い訳して誠一に抱っこしてもらってギュッと抱きついている。

「いいよ。果歩。誠太郎も熱が出てて辛いんだから…
じゃ、留守番してるから。」と診察室のドアを出て行った。


「サクちゃんプリン食べたい」

「帰りにコンビニ寄ろうな」とか言いながら廊下を歩いている。


誠太郎は誠一に甘えている。


外来でべったりしてたら思いっきり噂になりそうだ。

ふたりは似ていると誰かが気づいてしまうだろうか?


「よく似てるわー。親子にしか見えない」

と内海先生がクスクス笑って、私の隣に立って見送っている。


私はため息をついて診察室のドアを閉めた。






< 76 / 159 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop