誓いのキスを何度でも
「果歩!見て!」と嬉しそうに戻ってきた誠太郎はびしょ濡れで、楽しそうだ。

シンさんが持って帰ったバケツにヤマメが5匹入っている。

「すごいね!」と私がバケツを覗くと、パシャンと魚が跳ねる。

「いっぱい釣れたけど、食べるだけにして、後は川に帰すんだよ。それがルールなんだって」と誠太郎は自慢げに言って、バケツを運ぶシンさんとまた、川に戻っていく。

なんで2人ともビショビショなのかわからないけど、誠太郎の着替えは用意した方が良さそうだと思って、車に着替えを取りに行き、2人がまた帰ってくるのを待つ。

「ただいまー!」とシンさんと誠太郎が戻ってくる。

「シンさん、着替えは持ってきた?」と2人にタオルを渡しながら、誠太郎に着替えるようにいう。

「川があるから…と思って一応持ってきてよかった。」とクスクス笑っている。

「だってねー!釣った魚が逃げちゃって慌てて追いかけたら2人でバシャンって転んでー」
と誠太郎が一生懸命言い訳をしている。

「急に少し深かったんだよ。僕等がバシャバシャ音をたてたから、魚が逃げるって怒られて…
ふたりで平謝りだった。
でも、沢山ヤマメはいたから、すぐにまた釣れるようになったけどね。」と楽しそうに笑う。

「ご迷惑おかけしました」と私が頭を下げると、
「いいや。僕が先に転んだんだよ。逃げた魚は追いかけない方がいいって、よくわかったよ。僕らしくない事はやめた方がいいな。」とまたシンさんは私に微笑んでから、車に着替えに行った。

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