誓いのキスを何度でも
暗くなり始めて着いたシンさんの『秘密の場所』は天文台の敷地の中だった。


天文台に勤める高校時代の天文部で一緒だったお友達がいるからだ。

シンさんの友人に挨拶し、車ごと中に入れてもらう。

敷地内はヘッドライトの明かりは天文観測に厳禁なので禁止だ。
スモールライトで天文台の敷地はゆっくり道を行く。

天文台の敷地は自然の立地を生かしていて、木々が茂り、所々に窪地もある。

「ここだよ、僕の秘密の場所」と言って天文台に行く道の途中で車を停めたのは、よく見ると、クローバーの生い茂る小さな広場だった。

「誰も来ないから、静かでゆっくりできる。
お手洗いは天文台のが借りられる。ここから歩いて7分くらいかかるけどね。」と言って、暗闇の中で小さな明かりでテントを張る準備をする。

誠太郎も楽しそうに暗い光にしてある懐中電灯を持ってシンさんを手伝っている。

車を降りて、思わず見上げた夜空には満天の星。

「…すごく綺麗」と呟くと、

「果歩、サボってないで、手伝ってよ」と誠太郎が口を尖らせる。

「あっ、ごめんなさい」

「誠太郎くん、ヤッパリこういう時、頼りになるのはオトコだな」とシンさんは笑いながら、手際よくテントを張り、
テントの前に敷物を広げて、その上に毛布を3人分広げた。

山の頂上近くは真夏でも少し涼しい。


私達は準備を整え、キャンプ用のコンロでお湯を沸かし、テントの中で暖かい飲み物を飲みながら、流れ星を待つ。

誠太郎は待ちきれずに何度も外に出て夜空を見上げている。






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