誓いのキスを何度でも
私はひとりテントに残されてしまった。

テントの中で横になったまま、服の乱れを直す。

涙がいくつも流れていくのがわかる。

「ごめんなさい」と誰もいないテントの中で何度も繰り返して呟いていた。



シンさんのスマホが鳴り、話し声が少し聞こえた後、

「果歩。車に乗って。
アイツがもう、ここの門の前にいる。
流星を見に行くと、誠太郎から聞いていたんだろう。天文台のそばだと誠太郎には言っておいたんだ。
きっと、アイツは来るだろうって…
いくらでも探せばいい。って、
ここには入ってこれないしね。
これくらい心配させてやってもいいだろう。
もう、果歩を返してやるんだし…」

とクスクス笑って、シンさんは私を迎えに来る。

「シンさんは?」

テントはそのままだ。

「ゆっくり星を見て帰るよ。久しぶりに、ここに来たんだ。帰るなんてもったいない」

といつもの通りに微笑んで、私の頬を撫でてから、助手席に乗せた。
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