この手だけは、ぜったい離さない
それでも……たしかにあのヤンキーは洋くんなんだよなぁ。
言われてみれば、あの猫みたいな大きい目なんかそのまんま洋くんじゃんか。
「ほんと変わっちゃったなぁ……」
「あかり、そろそろ学校行かなきゃ本当に遅刻するよ」
「あっ、ほんとだっ。ごちそうさまっ‼行ってきますっ」
残りひとくちのオムレツを口に放りこんだ私は、ネイビー色のスクールバッグをひっ掴み慌てて家を飛びだした。
昔ながらの木造住宅の中に紛れて、最近建てたばかりの家から1歩でると周りは畑や田んぼばかり。
ずっと広がる田んぼの向こうには貨物列車が走っていたり、住宅はところどころにしかない。
車どおりが少ないこの道は、小学校の通学路だったから思い出がたくさんある。
洋くんと一緒に、白線から落ちたらワニに食べられるよ、とかっていう謎の遊びをしながら登校したこともあった。
洋くんと一緒に、田んぼでオタマジャクシを探したなぁとか。
でも洋くんはオタマジャクシを触れないから、私が捕まえてあげてたんだっけ。
あとは、洋くんとかけっこもした。
いつも私が勝ってしまうから、わざと負けてあげたりなんかしてたこともあったんだっけ。
って、洋くんとの思い出ばっかりだ。