この手だけは、ぜったい離さない



「いやいやいや、それはないでしょ⁉だって私ぜんっぜん可愛くないし」

「そんなことないよ、あかりちゃんは可愛いよ。追野くんと並んで歩いてる姿を見て、お似合いだなって思ったし」



地味で平凡な顔の私と、爽やかなイケメンの追野くんがお似合いだって…?

いやいやいや、ないないない……。

ありえない、断じてそれはない。



「うーん……そうかなぁ」

「そうだよ!追野くんとオリエンテーション合宿のグループも一緒なんでしょ?もっと仲良くなれるチャンスだね」



仲良くなれるチャンス、とか言われても私は追野くんのこと好きでもなんでもないんだけどな…。



「オリエンテーション合宿かぁ…」



2日後に控えている、あの2泊3日のクラスの親睦を深めるとかっていうイベントか。



「はるちゃんは、確か洋くんと同じグループだよね?隣の席だもんね?」

「そうそうっ、そうなの!洋と一緒に野外炊事とかウォークラリーができるのっ!もうほんっと楽しみでさぁ」



洋にキュンキュンしすぎて心臓が壊れないか心配だなぁ、なんて笑うはるちゃんはまさに恋する乙女モード全開で。

「それは楽しみだね」と苦笑いを返したら、胸の奥がぎゅっと痛くなってきた。



< 107 / 228 >

この作品をシェア

pagetop