この手だけは、ぜったい離さない



✱✱✱✱✱✱✱✱


『はぁ……どうしたらいいのかな。好きなのに、好きって言ったらこれまでの関係が崩れてしまいそうで怖いの』



辺りが薄暗くなりはじめたころに帰った私は、夕飯を待っている間に録画しておいた恋愛ドラマをベッドに座ってぼーっと眺めていた。



主人公は大学生の女の子の『サキ』。

幼なじみの男の子『ハルキ』に恋をしていて、なかなか告白ができなくて親友の『リカ』に相談しているっていうシーンだ。



サキの気持ちがよくわかる。

だって私も今、サキとまったく同じ気持ちだもん…。



わかるわかる、って頷きながら画面を見続ける私は、サキと自分の姿を重ね合わせる。



『じゃあこのまま告らないつもりなの?』

『それでハルキとずっと仲良しでいられるなら、それもありかなって』

『でも、ハルキに彼女ができたらどうするの?これまでのような、仲良しな関係ではいられなくなるかもよ?だってさ、女友達よりも彼女を優先するもんじゃない?』



サキにアドバイスをするリカの言葉は、サキの心だけではなくて、私の心をも揺さぶる。



洋くんもいつか彼女ができたら、私とはもう一緒に帰れないって言うのかな…。

言うよね。

だって私は女だから、洋くんの彼女が私の存在を嫌がるはずだもんね。



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