この手だけは、ぜったい離さない
賑やかな声が響く中で、やけにはっきりと耳に届いた声。
身体を捻ると私の右斜め後ろに、多津くんと荒井くんと一緒に座っている洋くんの背中がすぐ近くにある。
洋くん、あんがい近くに座ってたんだなぁ。
食べることに夢中になってて、ぜんぜん気がつかなかったよ。
「えーっ、いいじゃんいいじゃん!それならもう勝手に座っちゃうもんねっ」
生野菜サラダやハンバーグなどが、綺麗に盛りつけられた大皿を乗せたトレーを持ち、洋くんの隣に座ったはるちゃんの横顔は嬉しそう。
「もー……なんだよお前。来んなっつったのによぉ」
「だって洋の隣が寂しそうだったんだもーん!ねっ、荒井、多津?」
はるちゃんのご機嫌な笑顔に、荒井くんも多津くんも「あぁ……うん」って苦笑いをしている。
「あかり……あのふたりが気になるんだ?」
「えっ?あぁ……いや、別にそんなことはっ」
みっちゃんの声に慌てて身体の向きを戻すと、みっちゃんはニヤニヤ笑っていた。
「いいなぁ、私も洋くんと一緒に夕飯を食べないなぁって顔してるよ?」
「う……」
「あかりも遥ちゃんみたいに積極的に話しかけなきゃ、遥ちゃんに仙崎をとられちゃうよ?あっ、洋くんすぐ後ろにいたんだねって話しかけてみたら?」
「はぁ……うん」