この手だけは、ぜったい離さない
「えっ、マジ?いま仙崎たちと麻雀してるって?」
時は早くも夜の21時。
大浴場でお風呂をすませて、ピンク色のチェックのパジャマに着替えた私は宿泊部屋で濡れた髪を乾かしている最中。
いち早く長い髪を乾かし終えた神田さんが、スマホで電話をしながら興奮ぎみに声をあげた。
なにっ……⁉
洋くんと一緒に麻雀だって⁉
ってことは、神田さんが話している相手ははるちゃんってこと?
「え、なになに?遥ちゃん、仙崎たちの部屋に乗りこんでるの?」
電話を切った神田さんに、すかさずそう問いかけたのはまだ髪が濡れているみっちゃん。
「そうみたい。結花と一緒にむりやり乗りこんでやったから、乃衣も追いでってさ」
結花って……同じクラスの、舞野結花(まいのゆか)ちゃんかぁ。
背が低くて、肩くらいのふわふわパーマの茶髪が似合う女の子。
確か、隣の宿泊部屋のはるちゃんとは同じ部屋だったよね。
えぇぇ……はるちゃんと舞野さん。
いま洋くんと一緒にいるの……?
「ってことで私も参戦してくるねーっ」
「乃衣ちゃん、22時30分の点呼までには戻らなきゃだめだからね?」
ドライヤーで髪を乾かしながら注意をするみっちゃんに、乃衣ちゃんは「わかってるってー」と、笑いながら出て行ってしまった。