この手だけは、ぜったい離さない
やだ。
やっぱり嫌だ。
洋くんが他の誰かに笑いかけているなんて、考えたくもないよ…。
オセロの盤面が涙でぐらぐらして見えてきた。
私の顔を覗きこんできた、みっちゃんの顔までも揺らいで見える。
「えっ、泣いてるのって?わっ、どうしたの宇月さん?」
「なになに、なんで泣いてるの?」
「どうしたの、大丈夫?体調悪いとか?」
話したこともないクラスメイトの女の子4人が、取り囲むようにして私の周りに集まってきた。
「……あははは!」
むりやり明るい声を絞りだした私は、パジャマの袖で乱暴に目をこする。
「びっくりした?ごめんごめん、私なりのドッキリを仕掛けてみましたー!実は嘘泣きが特技なんでーすっ!」
いや……ほんとは真っ赤なウソなんだけどね。
私を心配してくれたみっちゃんにも、話したこともないのに私に声をかけてくれた、園崎さん、谷口さん、筒原さん、戸賀さんにも。
はるちゃんに嫉妬して泣いちゃっただなんて、そんなこと恥ずかしくてぜったいに知られたくなかった。
「もぅ……ちょっとびっくりしたーっ」
「なんだ、嘘なの?すっごく泣きまね上手いよね?」
「あはは、宇月さんっておもしろいんだね」
ほっ…。
よかった、なんとか誤魔化せたみたい…。