この手だけは、ぜったい離さない



『そうなんだ、楽しそうだね』と送り返そうと思ったところで、私の隣でスマホのディスプレイを眺めていたみっちゃんが「そんなんじゃダメよ」って深いため息を吐いた。



「もうちょっと積極的にいかなきゃ。そこは、いいなぁ〜私も行ってもいい?って返すのよ」

「えーっ、なんでダメなの?行ってもいいとか……そんな大胆なこと恥ずかしくて言えないってば!」



みっちゃんに「ちょっと貸しな」とスマホを奪いとられてしまった私は、何やら高速で文章を打っているみっちゃんの手元を覗きこんだ。



『楽しそう〜!私も洋くんたちの部屋に行きたいなぁ。今から行ってもいいかな?』



……って、はてなマークのあとにちゃっかりハートとか使っちゃってるし。

もうちょっと積極的、とかっていうレベルじゃないでしょそれは。

大胆に攻めすぎでしょそれは。



「みっちゃんそれはぜったいにダメだから!ハートとかほんっとにやめて!」

「え?もう送っちゃったけど…」

「ちょっと何してんのよーっ、みっちゃんのバカ!」

「あはは、これくらい大丈夫だって!」



あはは、じゃないよもうっ!

今まで使ったことのないハートなんか使っちゃって……。

恥ずかしすぎて、洋くんと顔をあわせることが嫌になってきちゃったじゃん。



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