この手だけは、ぜったい離さない
「あっ、ほらほらすぐに既読がついたよ」
「もうほんとにやめてよ!ハートとかぜったいにダメ!洋くんだってドン引きだよっ!」
「引かないでしょー、大丈夫大丈夫っ」
「いいからもう返してよっ!」
今から行ってもいい?
とかって言うだけでも恥ずかしいのに、あろうことかハートだなんて!
洋くんだって、うわぁ……なんだよコイツハートとか気持ち悪いわ。
って思ってるよぉ、ぜったいに…。
涙目になりながらみっちゃんの手からスマホを奪い返すと、洋くんからちょうど返信がきた。
『全力の枕投げやってるから今はダメ』
勝手に恥ずかしい返信をされたうえに、部屋に行くのはダメだってばっさり断られちゃってるし…。
恥ずかしいやら断られてショックやらで、なんだか泣きそうになってきた。
「ほら見てよこれ、やっぱり迷惑だったんじゃんかっ!みっちゃんが勝手にラインしたりするからだよ!」
どうしてくれるのよこれ、とスマホのディスプレイを突きつけるようにして見せる。
みっちゃんは「大丈夫だから」って笑いながら私の手からスマホを抜き取った。
「ちょっとまた洋くんに勝手に送ったりしないでよ!」
「もうハートは使わないから、あと1回だけ送らせてっ」
ぜったいに嫌だ、と怒りながらみっちゃんの手からむりやりスマホを取りあげると『そっか。じゃあ楽しんでね』ってラインがすでに送られていた。