この手だけは、ぜったい離さない
22時半の点呼の時間になる前には、洋くんたちと枕投げをしていた神田さんが戻ってきた。
「あーっ、お風呂あがりなのに超汗かいた。仙崎も荒井も本気で枕投げてくるからさぁ。ムキになっちゃったよ」
と、額にきらきらと汗を滲ませながら神田さんは「めっちゃ盛りあがった」って笑っていて。
そんな神田さんの周りで、谷口さんや戸賀さんも「いいなぁ、楽しそう〜」って笑っていて。
私もそんな神田さんたちを横目で見ながら、いいなぁ楽しそうって密かに思った。
布団を横に2列、7人分の寝具を綺麗に並べたあとは暗い部屋の中でお決まりの恋愛トークがはじまった。
このメンツの中で彼氏がいるのは唯一みっちゃんだけ。
だからみっちゃんは私の隣で「みんな好きな人いるんだねぇ」って呑気に笑っていたりなんかして。
「私ね……実は荒井が好きなんだよねっ!」
そんな告白をした神田さんも、神田さんの告白に「えぇーっ、そうなの⁉」って声をあげる園崎さん、谷口さん、筒原さん、戸賀さん。
すごく盛りあがってる。
そして私はというと…。
『好きな人教えて』攻撃から逃れるために、ひとり布団を首元までかぶって寝たフリをしている。
……ように見せかけて、洋くんとのラインの続きをしていた。