この手だけは、ぜったい離さない
『神田さんが洋くんと荒井くんが本気で枕を投げてきたって楽しそうに笑ってたよ〜』
洋くんからの返信は、いつも早い。
すぐに既読がついたかと思うと、1分も経たないうちに返ってきた。
『だって神田と舞野と遥、俺ばっかり狙ってくるからムカつくんだよな』
『それは洋くんが人気者ってことじゃないかな〜?』
『ぜんぜん嬉しくねーっての』
洋くんに会えなかったことは残念だけど…。
こうしてクラスメイトの目を盗んで、こっそりと布団の中でラインのやりとりを続けるっていう状況にドキドキしつつ…。
そして私はスマホを握りしめたまま、誰よりも早く寝落ちしてしまった。
「あーかーりっ、あかり!ちょっといい加減に起きなよ!」
耳元で聞こえるみっちゃんの声。
背中をぐらぐらと強く揺すられ、はっと上半身を起こした。
「ぷっ……あははは、宇月さん前髪めちゃくちゃはねてるよ!」
「えっ、神田さんそれ本当?って……げっ、寝癖がやばい!」
慌てて洗面台の前に立った私は、目より少し上の長さの前髪がぜんぶ上に跳ねあがっている光景に朝から大絶叫!
「やばいやばいっ!何で今日に限っていつも以上に寝癖が激しいのよーっ」
「宇月さん、早く体操服に着替えなきゃ。これから芝生広場でラジオ体操だよ」