この手だけは、ぜったい離さない
「マジでめんどくせぇ。誰だよ⁉俺を野菜係りなんかに任命したやつは!んなもん女子がやっとけよ!」
「私でーすっ。だって洋がいなかったから、勝手に決めちゃった!ね?野菜の切り方は私が教えてあげるから?」
「はいはいわかったわかった‼やればいいんだろやれば!」
なんだか、この合宿を通してはるちゃんと洋くんの距離が縮まっていってるように見える。
私の方はというと、洋くんとラインは少ししたけど会話はほとんどできてない。
もしかしたらこのまま、ふたりは付き合ってしまったりして?
ありえるよねぇ……だってはるちゃん可愛すぎるもん。
はるちゃんみたいな可愛い子に言い寄られたら、私がもし男だったらぜったいにころっといっちゃうな。
そんなことばかりが頭を過ぎってしまって、今は楽しみにしていた野外炊事だってのにため息が止まらない。
また深いため息をこぼしたとき、左手の人差し指に鋭い痛みが走った。
「いっ……たぁぁいっ!」
思わず右手に持っていた包丁をまな板に投げると、左手の人差し指からボタボタと血が流れてきた。
「うわっ、大丈夫あかり⁉包丁で切ったの?すごい血じゃない!」
「えへへ……ちょっとぼーっとしてて。いたたたた…」