この手だけは、ぜったい離さない
「もう何やってんのよバカあかり!ほら、私のティッシュ使って!」
ほんっと私ったらなにやってんだろう…。
この合宿がはじまってからというもの、洋くんとはるちゃんのことばかり目で追ってしまって…。
気にしないようにしてるつもりなのに、気になって気になって仕方がない。
その声が耳に届けば、すぐに姿を探してしまう。
洋くんの姿を見つけたときはいつも、洋くんの瞳には楽しそうに笑うはるちゃんが映っているんだ。
「あははは…ごめんね、ありがとうみっちゃん」
私……また泣きそうになってる。
みっちゃんにもらったティッシュを患部に押しあてると、みるみるうちに真っ赤に染まっていく。
「って、ティッシュ2枚しかなかったね。これじゃぜんぜん足りないよ。大丈夫、あかり?泣きそうな顔して…そんなに痛いの?」
「宇月さん、大丈夫?けっこう血が出てるね。いったん宿舎に戻って手当てしてもらいなさいって先生が言ってたよ。僕も班長として一緒に行くから行こう?」
「うん……ごめんね、追野くん。みっちゃんもありがとう」
とりあえず野菜はみっちゃんに任せて、飯盒の火の守りは荒井くんにお願いして…。
目頭を熱くさせる涙を拭きとり、追野くんとふたりで野外炊事場を離れた。