この手だけは、ぜったい離さない
とまぁ……トラブルはあったけれど。
追野くんやみっちゃん、それから荒井くんと協力してご飯とカレーを無事に作り終えることができた。
「うんっ‼ご飯もいい感じの硬さに炊けてるね」
「当たり前だろ。この俺が手伝ってやったんだからな。マズイっつったらぶっ飛ばすぞチビ」
あはは……相変わらず荒井くんは私に攻撃的で怖いな。
「カレーも美味しいよ。有坂さんと宇月さん、本当に料理上手だね」
「私は何もやってないよ、追野くん。炒めるのも煮るのも、ぜんぶあかりがやってくれたから。ね、あかり?」
「えっ、あ……うん。うまくできたみたいでよかったぁ!」
まぁでも、荒井くんも「うめぇ」って言いながらガツガツ食べてくれているし。
追野くんだって「おかわりしようかな」って嬉しそう。
それにしても…。
まさか荒井くんがこうも素直に作業をしてくれるなんて、思ってもいなかったからびっくりしたなぁ。
俺は何もしない、なんて言ってサボるものとばかり思っていたよ。
でもみっちゃんが言うには、私と追野くんがいない間も荒井くんはずっと飯盒の前にいたみたい。
みっちゃんが「アレはぜったいアウトドア好きだね」ってぼやいてたくらいだから。
そんな、荒井くんの意外な一面を垣間見れた野外炊事だった。