この手だけは、ぜったい離さない



「荒井くん、どこに行ってるの?1番のチェックポイントは、そこを右に曲がるんじゃなくてまっすぐだよぉ」



慌てて荒井くんの元に走っていって肩を掴んだ。



「いや、お前らとなんか一緒に行かねぇし」



って、えぇ〜……。

野外炊事のときはあんなに協力的だったのに?

ここにきてそんなこと言う?



荒井くんは「あ、洋?いまどの辺にいんの?」って本当はダメなのに、スマホで堂々と通話をしながら私の前からどんどん離れて行く。



あぁ、なるほど。

洋くんと合流するつもりなんだね、荒井くんは。



「って、荒井くん待ってよ〜っ!ちゃんとグループで行動しなきゃっ!」



……なんて、追いかけて肩を叩こうかと思ったけれど。

また「テメェ俺になんか文句あんのか?」って怒られそうな気がしたから、やめておいた。



「あかり、荒井のことはもう放っておけばいいよ。とりあえず私たち3人で行こう」



ぽん、と肩を叩かれて振り返ると、そこには呆れたようにため息を洩らすみっちゃんがいた。



「途中でまた会うだろうから、その時にまた荒井くんと合流すれば大丈夫だよ。今は荒井くんが一緒に行きたい人と行かせてあげよう」



追野くんが天使のような笑みと優しさを炸裂させたところで、荒井くんをのぞいた3人で木々に囲まれたアスファルトの斜面をくだりはじめた。



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