この手だけは、ぜったい離さない
洋くんはずっとコンビニにいたって聞いたから、きっとこのれんげ畑を知らないんだよね?
「一面れんげの花が咲いていてすごい綺麗だったんだよ」と笑いかけると、洋くんは「ふーん、あっそ」なんて…。
冷たく言い放ったあと、ぷいっと顔を逸らされてしまった。
まぁ……洋くんは男だから花なんかどうでもよかったかな?
いかにも興味ありませんって感じで私から離れて、部屋の隅に座ってひとりスマホをいじりはじめたし…。
追野くんには「またあとで写真送ってみるね」と言って離れ、洋くんに「今度はトランプでもする?」って話しかけてみた。
洋くんの隣に座って、スマホを眺める顔を覗き込むと目があった。
「いいけど……。でも、その前に…」
いきなり洋くんの右手が私の左肩をかすめたかと思ったら、右肩を掴まれぐっと身体を引き寄せられた。
「えっ……ちょっ……⁉」
なに、なに⁉
なんなのーっ⁉
私……洋くんに肩を抱かれてるっ⁉
「俺もあかりと写真撮っとこうかなーって。ほら、ちゃんと前向いて」
あぁ……なるほど。
スマホの内側カメラを使って、私と写真を撮るつもりだったのか。
そんなことよりも洋くんと顔が近いっ……!
もう少し身体を左に傾ければ、頬と頬が触れ合ってしまいそう。