この手だけは、ぜったい離さない
「え……?なになに?いきなりどうしたんだよ、あかり?」
「今度からは私が席を譲ってあげるから、もう他の人をムリヤリ立たせたりなんかしたらだめだよ?わかった?」
洋くんの口元から笑顔が消えた。
それにさっきからずっと荒井くんには睨まれているし…。
ごくり、と息をのみこむ。
やだ……怖い。
もしかして怒らせちゃったかな……?
なるべくふたりを怒らせないようにって、言葉を選んで注意したつもりだったけどな…。
いくら幼なじみだからって、相手はこのあたりでは名の知れたヤンキーだもんね…。
そんなふたりを注意しちゃった私って……かなりやばい?
「あははははっ!ってことで……私はこれで……」
なんだか急に血の気がひいてきて、さっさと逃げだそうと踵を返したとき。
「ちょっと待てやコラ。黙って聞いてりゃ偉そうなこと言いやがって」
荒井くんの怒りに満ちた声。
ビクッと肩を震わせ、おそるおそる振り返った私の顔はきっと蒼白になっていること間違いない。