この手だけは、ぜったい離さない
「あかり、校門で待ってればいいのか?一緒に教室を出ればって思ったけど、なんか用事でもあんの?」
「ごめんね、洋くん。はるちゃんとちょっと話すことがあって…。終わったらすぐに行くから!ありがとう」
「遥と話し?ふーん…わかった」
15時になりチャイムがなると、教室の中で洋くんと別れて屋上へ向かった。
屋上はいつでも誰でも出入りできる場所で、ヤンキーのサボり場になってたり、お昼休みにはたくさんの生徒が来る場所。
だけど放課後になると、誰も来なくなることを知っているから屋上を選んだんだ。
屋上の錆ついた扉を押しあけた。
はるちゃんは来てるかな?
ドキドキしながら中を覗くと、そこにはまだはるちゃんの姿はない。
はるちゃん…。
私が『洋くんを好きになった』って言えば、どんな反応をするんだろう。
怒る?
悲しむ?
笑い飛ばしてくれる?
緊張する。
とりあえず気を落ちつかせなきゃ。
フェンス越しに景色でも見よう。
あっ、そういえば屋上から、洋くんが待ってくれている校門が見えるんだよね。
洋くんの姿はどこかな?
2メートルはある高さの緑色のフェンスの網目から、グラウンドの端っこに見える校門を眺めた。
「あかりちゃん、ごめんね遅くなっちゃって。乃衣とトイレの洗面台のとこで話しててさぁ。待ったよね?」
「あっ、ううん!私も洋くんと話してて、さっき来たばっかりだから!」