この手だけは、ぜったい離さない
「……っ」
じゃあ洋くんは、6年前から私のことを想ってくれていたというの?
頭の中でなんどもなんども『嘘でしょ?』と繰り返す。
『本当にこれは現実なの?』と、頭が真っ白になる。
「ほ……本当に?」
洋くんが「嘘なわけないだろ」って真面目な顔で頷いたから、涙が止まらなくなった。
じゃあ…。
私にだけ一緒に帰ろうと言ってたのも。
アイスを食べに行こうと言ってくれたのも。
私にだけ話しかけてくれて。
私にだけ笑いかけてくれていたのも。
洋くんは、私のことを好きだと思ってくれていたからなの…?
6年前のあの日。
桜がぽつりぽつりと開花をはじめた季節。
『おれ、待ってるね!あかりのこと、ずっと待ってる!』
お父さんが運転する車を泣きながら追いかけてきた洋くん。
本当にずっと、私のことを待っていてくれたっていうの……?
「なぁ……俺、昔に比べると少しは強くなったんだよ。だから今度は、俺があかりを守るから」
洋くんの右手の親指が、私の頬を止まることなく伝う涙を優しく拭ってくれる。
「だから、俺の彼女になってよ」
温かい涙がはらはらと、絶える間もなく流れ落ちる。
これは悲しい涙じゃない。
嬉しくて、嬉しくて、嬉しくてたまらないから溢れてくる涙なんだ。