この手だけは、ぜったい離さない
「ちょちょちょっ……みっちゃん?そんなに急いでどうしたの?」
なんだか焦っている様子のみっちゃんに引きずられるようにして、洋くんと荒井くんの前から離されてしまった。
「いいからさっさと歩くっ!」
みっちゃんは洋くんたちの姿が完全に見えなくなる靴箱まで歩いたところで、ようやく私の手を離してくれた。
「もうっ、バカあかり!アイツらに注意するなんてなに考えてるの⁉目をつけられたらどうするのよっ!」
「それは大丈夫だと思うけどなぁ…?だって洋くん、笑ってたよ?」
荒井くんのことを怒らせてしまったけど、でも洋くんはそんな荒井くんをなだめてくれたし。
「変わってねぇな」って笑っていたし、ぜんぜん悪い雰囲気じゃなかったんだけどな…。
「笑ってるからこそ怖いのよ、仙崎は。温厚そうに見えるけど、実は荒井よりもケンカっぱやいし強いって噂なんだからね」
「そ……そうなの?」
「とにかくもうあんなことしたらダメだよ」
まだはじまったばかりの学校生活が地獄になるよ、と付け加えたみっちゃんの目は真剣だった。
やっぱり私……いくら幼なじみだからって洋くんに注意するなんて、まずいことしちゃった?