この手だけは、ぜったい離さない
メガネの奥の目尻が垂れ下がった二重の瞳が優しい彼は、左隣の席の追野蒼(おいのあおい)くんだ。
みっちゃんから聞いた話しで追野くんは成績優秀、スポーツ万能、さらにはその甘いマスクと優しい性格で、女の子たちから人気があるみたい。
これまでに恋をしたことがない私の目から見ても、追野くんは素敵だなって思う。
いつもクラスメイトに囲まれて、にこにこ笑ってる姿はとっても魅力的。
まぁそれはさておき……。
「オリエンテーション合宿って……?」
ぼーっと洋くんのことを考えていたせいで、先生の話しをぜんっぜん聞いてなかったんだけど…。
「クラスの親睦を深めるための、2泊3日の学習だよ。山の中にある宿舎に泊まって、勉強したり、グループで野外炊事とかウォークラリーとか、あとはクラス対抗で長縄跳びとかをやるみたいだよ」
「4人1組のグループで力を合わせてやるんだって……ってあかり、先生の話しなんにも聞いてなかったの?」
「あはは……ごめん、聞いてなかった」
ってことはつまり、私とみっちゃん、追野くんは出席番号が近いからってことで同じグループなんだね。