この手だけは、ぜったい離さない
「オリエンテーション合宿のことでね、荒井くんは僕たちと同じグループなんだけど…」
「オリエンテーション合宿?同じグループ?ってなんだよそれ…」
荒井くんは追野くんから視線を横にずらしたあと、みっちゃんを見て。
そのあと流れに沿うようにして私を見たときに、バチッと視線が絡みあってしまった。
「あっ……テメェさっきのクソ女っ⁉」
「あはははは……ごきげんよう、荒井くん…」
私から視線を逸らさない荒井くんの表情に、みるみる影が落ちる。
あぁぁ……やっばい。
荒井くん、完全に怒ってるよどうしよう。
「テメェさっきはよくも生意気言いやがって……」
「荒井くん!暴力はいけないよ!」
咄嗟に止めに入ってくれた追野くんにはまるで見向きもしない荒井くんは、バシンと私が座る机を乱暴に叩いた。
そのとき、荒井くんの怒号を聞いた洋くんが飛んできて「おいコラ、ノリ!」って荒井くんの背中を平手で叩いた。
「いってぇなぁ、洋!いきなりなにすんだよっ」
「だーかーら、あかりは俺の幼なじみなの。イジメてんじゃねぇよ」
なぁ、あかり?
コイツほんとしつこくてごめんな?
と洋くんが優しく笑いかけてくれたことで、ほっと安堵の息が洩れた。