この手だけは、ぜったい離さない
「あ……いや、私は大丈夫だから」
「コイツ、バカみたいにキレやすいんだよ。だからあかりももう、コイツを怒らせないでやってくれよな?」
荒井くんの鋭い視線を気にもとめていない洋くんは、私の頭をぽんぽん、となだめるように撫でてくる。
「あ……ごめんね。ありがとう、洋くん」
洋くんに笑いかけられると、たちまち胸がじんわり温かくなってきて。
瞳を潤ませていた涙も一気になくなって、ふっと笑顔になる。
気持ちも和やかになる。
あぁ、この感じ。
懐かしいなぁ。
6年前にも思っていたこと。
洋くんと一緒にいるとなんだか心がぽかぽかして、自然と笑顔になれる。
だから私は洋くんの隣が好きだったんだよね。
「マジでお前どうかしてるわ。こんなクソ地味なムカつくチビ女のどこがいいんだか。南海のほうがぜったいにいいだろ」
まだ怒りが冷めない荒井くんが、洋くんを睨みつけたことでまた雰囲気がピリピリしはじめた。
いやいや荒井くん……。
クソ地味なムカつくチビ女って……傷つくなぁ。
肩を落とす私の前からすっと離れた洋くんは、とつぜん薄ら笑いを浮かべている荒井くんの胸ぐらを捻りあげた。