この手だけは、ぜったい離さない
「おい、誰がクソ地味なムカつくチビ女だって?あかりの悪口は許さねぇぞテメェ」
「あぁ?なんだよお前やんのかよ‼」
荒井くんが洋くんの胸ぐらを掴み返したところで、やたらと体格のいい担任が「コラ、なにをやってるんだ!」と止めに入った。
先生がガミガミ言いながらふたりを廊下に連れだしたことで、教室から怒号が消えた。
といっても静まりかえってしまった教室には、廊下から「テメェぶっ殺す」だとか「やってみろや雑魚」だとかって…。
荒々しい言葉の数々が聞こえてくるんだけどね…。
「あかり、ぼーっとしてるけど大丈夫?ほんと……びっくりしたね」
「えっ……?あぁ、うんっ。大丈夫だよ、みっちゃん」
「それにしてもあの仙崎が、あんなふうに誰かを庇うなんてはじめて見た。ほんとびっくりなんだけど」
「ん?びっくり……?」
「アイツにとってあかりは特別な存在みたいだね」と呟いたみっちゃんは窓越しに、荒井くんを睨んでいる洋くんを眺めていた。
「ほんとにそうだとしたら嬉しいなぁ…」