この手だけは、ぜったい離さない



「おい、誰がクソ地味なムカつくチビ女だって?あかりの悪口は許さねぇぞテメェ」

「あぁ?なんだよお前やんのかよ‼」



荒井くんが洋くんの胸ぐらを掴み返したところで、やたらと体格のいい担任が「コラ、なにをやってるんだ!」と止めに入った。

先生がガミガミ言いながらふたりを廊下に連れだしたことで、教室から怒号が消えた。



といっても静まりかえってしまった教室には、廊下から「テメェぶっ殺す」だとか「やってみろや雑魚」だとかって…。

荒々しい言葉の数々が聞こえてくるんだけどね…。



「あかり、ぼーっとしてるけど大丈夫?ほんと……びっくりしたね」

「えっ……?あぁ、うんっ。大丈夫だよ、みっちゃん」

「それにしてもあの仙崎が、あんなふうに誰かを庇うなんてはじめて見た。ほんとびっくりなんだけど」

「ん?びっくり……?」



「アイツにとってあかりは特別な存在みたいだね」と呟いたみっちゃんは窓越しに、荒井くんを睨んでいる洋くんを眺めていた。



「ほんとにそうだとしたら嬉しいなぁ…」


< 31 / 228 >

この作品をシェア

pagetop