この手だけは、ぜったい離さない
私は今でもまだ、洋くんのことをいちばんの友達だと思っているから。
洋くんも同じ気持ちでいてくれてるのなら嬉しい。
でも私のせいでふたりがケンカになってしまったから、洋くんと荒井くんが戻ってきたら謝らなきゃな…。
深いため息をこぼし、みっちゃんの視線を追うように窓の外を眺めていると。
「……さぁさぁっ、オリエンテーション合宿の話し合いに戻ろうよ!」
追野くんが手を叩きながら明朗な声を弾ませると、教室内にまた賑やかな声が戻ってきた。
私たちのグループの班長は、追野くん。
野外炊事ではカレーを作るみたいで、私とみっちゃんは野菜を切る係。
追野くんと荒井くんはその間に飯盒でご飯を炊いて、煮込む作業は4人でしようってことでまとまった。
他のクラスメイトたちも、みんなそれぞれ分担が決まったみたいで「楽しみだね」って声があちこちから聞こえてきた。
そんな中でも洋くんと荒井くんは、教室に戻ってくることはなかった。
「ねぇねぇ、みっちゃん!今日一緒に帰ろうよぉ」
今日はロングホームルームばかりで終わり、お昼前に下校時間を迎え。
スクールバッグを肩にかけて帰ろうとしているみっちゃんの背中を叩いた。