この手だけは、ぜったい離さない
「ごめーん、今日はこれから啓太とランチ食べに行く予定なんだよねぇ」
「そっかぁ……楽しんできてねっ!」
「じゃあまたあしたね」
嬉しそうな顔で手をふりながら、教室からでていったみっちゃん。
いいなぁ……私も彼氏がほしいなぁ。
って、好きな人すらいない私にはとうぶんの間は無縁だろうなぁ。
「はぁ……私も帰ろ」
みっちゃん以外に親しく話せるような友達がまだいない私は、ひとり寂しく教室をでた。
「あっ、あかり!」
足元に視線を落としたまま校門をくぐり抜けたところで、とつぜん呼び止められた私ははっと顔をあげた。
「あっ……あれ?洋くん?」
洋くんは校門の石柱の前でしゃがみこんでいたのか、目の前を通るまでその存在に気づかなかった。
誰かを待っていたのかな。
荒井くんの姿が見えないから、荒井くんを待っていたのかな?
「教室に戻ってこなかったから、もう帰ったのかと思ったよ」
「いやいや、めんどくさくなったからずっと荒井と校舎裏でサボってた」
荒井くんと一緒にいたってことは、あのあと仲直りしたんだね。
よかった…。