この手だけは、ぜったい離さない



「ごめんね、洋くん。私のせいで荒井くんとケンカに…」

「いや、あかりは何も関係ねぇし。俺が勝手にムカついて、ケンカ売っただけだから。そんなことよりも、あかりと久しぶりに話したいなって思ってここで待ってたんだよ」



え……私を待ってた?

しかも私と話したいって……⁉



洋くんはてっきり荒井くんを待ってるもんだとばかり思っていた私は「へっ?」だなんて、マヌケな声を洩らしてしまった。



「俺が知らない6年間のこと、いろいろと聞きてぇんだよ。だからとりあえず、これから昼でも食べに行かね?」

「あ……うん、いいよ…?」



洋くんは「じゃあ決まり」と満足そうに笑うと、ついて来いと言わんばかりに先を歩きはじめた。



右には民家がずらりと並んでいて、左にはずっとまっすぐに伸びた用水路に、その向こうには田んぼ。

私と洋くんが並んで歩く歩道のすぐ横を、絶え間なく行き交う車。



そんなこのあたりに徒歩で行ける飲食店といえば、まっすぐ歩いた先にある駅前のファミレスしかないからきっとそこに向かっているんだろうな。



そういえば私、お昼が食べれるだけのお金もってきたかな…?


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