この手だけは、ぜったい離さない
メニュー表を開いたままテーブルに置き、洋くんが見やすいようにってくるりと反転させた。
洋くんは「おっ、サンキュー」と前のめりになってメニュー表を覗きこむ。
そんな洋くんの様子をじっと見ていたのか、アリサさんとミオさんがとつぜん手を叩きながら笑いはじめた。
「あっはっは!なーにが俺も決めるの遅いし、よっ!嘘ばっかり!」
「ファミレス入るなり10秒で決めんじゃん!俺はペッパーハンバーグでっ、てメニュー表とか見ないじゃん!」
えっ……それはどういうこと?
洋くんってば、私に気を使わせないようにするために「まだ決まってない」だなんて嘘をついたってことなの?
「テメェら余計なこと言うんじゃねぇっ!今日からじっくり決めることにしたんだよっ」
メニュー表を映していた視線をぱっとあげると、洋くんの頬が耳まで赤くなってる。
「なんか……ごめんね。私が優柔不断すぎてなかなか決められないから…気を使わせちゃったね。急いで決めるからっ」
「別に気なんか使ってねぇよっ!俺は本当に今日からじっくり決めるつもりで…」
なんて言っていた洋くんだけど、私がチーズインハンバーグのライスセットを注文したあと。
ペッパーハンバーグのライスセットを頼んだから思わず笑ってしまった。