この手だけは、ぜったい離さない
「洋くん、ごちそうさまでした。本当にありがとう」
「なんかごめんな……アリサとミオがうるさくて。落ち着かなかったよな、マジでごめん」
「ううん、大丈夫だよ。洋くんの友達に会えてよかったよ」
食事を終えてファミレスをでて、スマホをみると時刻は14時を過ぎていた。
人見知りをしてしまう私は、あのあとアリサさんともミオさんとも話せなかったけど…。
でも、私が知らない洋くんのことを少し知れたり、3人のやりとりが面白かったりでなんだかんだ楽しかった。
「アイツらは中学のときのツレでさ、荒井も含めてしょっちゅう夜遊びしてたんだよな。最近はぜんぜん遊んでないけど」
「そうなんだ?なんで遊ばなくなったの?」
「えー、なんだったかな。アイツらのどっちかに彼氏ができて……束縛が激しいから俺らとは遊べないー、とかだったかな?」
ブレザーのポケットからとりだしたガムを噛みながら答えてくれた洋くんは「あんま覚えてねぇ」とか言ってて。
あげくのはてには「そんなことどうでもいいよ」なんて、本当にどうでもよさそうに言うもんだから。
それ以上のことは何も聞かなかった。