この手だけは、ぜったい離さない
「それにしても洋くんが女になびかない硬派って……なんか想像つかないなぁ」
「なんだよそれ、俺がチャラい男だと思ってる?」
「いやいや、洋くんぜったいにモテるだろうからさぁ。女の子なんて選び放題でしょ?」
それなのに彼女すらつくらないなんて、もったいないっていうかなんというか。
羨ましいっていうかなんというか。
「別に……好きでもない奴と付き合ったって楽しくねぇし。それに俺には心に決めた子がいるんだよ」
「ん?心に決めた子……?それは好きな人ってこと?」
「いやっ……なんでもない!今のは聞かなかったことにしてくれっ!」
洋くんの頬がみるみる赤く染まっていく。
かと思えば私からプイッと顔を逸らして、バス停に向かう足を速めた。
あ……洋くんってば恥ずかしがってるな。
その好きな人がどんな人なのか、すっごく気になるけど…。
耳を真っ赤にさせて私の1歩前を歩いている洋くんが、教えてくれるとは思えないから聞かないでおこう。
私もちょっと歩調をはやめて、洋くんのすぐ隣に戻る。
「わかったわかった、じゃあ今のは忘れるね」
「ぜったいに思いだしたりなんかすんなよ」
そう言って私を見た洋くんの頬は、やっぱり真っ赤だった。