この手だけは、ぜったい離さない
えっ……洋くん、もしかしてドン引きしてる?
ひとりで長い時間バスを待つのは寂しそうだとかって、そんなことは余計な心配だったかな?
一緒にバスを待つなんて、そんなん頼んでねぇしいらねぇしって迷惑に思われちゃった……?
それとも歩いて帰るつもりだったのかな?
20分もあれば帰れるし、わざわざ1時間もバスを待つより早いもんね…。
「あの……洋くん?」
洋くんのブレザーを掴む手に、ぎゅっと力がこもる。
「あぁ……もうっ!なんだよ……マジで可愛すぎる…。心臓がやべぇ…」
「……えっ?かわいいって言った…?え、なに?なんの話し?」
洋くんはいったい何の話しをしてるんだろう…?
なんかよくわかんないけど、また頬が赤くなってる…?
「いやっ、別にっ!ただのひとりごとだから!だからあかりは何も知らなくていいんだよっ‼」
「え……そうなの?」
知らなくてもいいって…。
そんなこと言われたら、逆に気になってしまうんだけどなぁ?
「もういいからさっさとバス停戻るぞっ!」
私からさっと身体を反転させた洋くんは、バス停に向かってやけに早足で歩きはじめた。
「あっ、ちょっと待ってよぉ」
バス停にズンズン歩いていく背中を慌てて追いかけた。