この手だけは、ぜったい離さない



「……って、あかり。同じクラスなのにわからないの?ほら、仙崎の隣の席のすっごく可愛い顔した子だよ」



可愛い顔をした子、って言われてはっと思いだした。

荒井くんが言っていた『南海』って、そういえば同じクラスの南海遥(ななみはるか)さんのことじゃん!



「あっ、あぁうんわかるわかる!私、入学式で見たときすっごく可愛い子がいるなぁって思って見てたんだっ!そうそう、同じクラスだったね」



胸下まで伸びる栗色の髪は、サラサラしていて綺麗だったこと。

抜けるように白い肌。

お人形さんのようにぱっちりとした瞳は、アイシャドウやアイライン、マスカラで控えめにメイクがしてあって、それが本当に上手で。



160センチあるみっちゃんよりももう少し背が高くて、どこのモデルさんなんだろうって思ったくらい。

そんな子と同じクラスって知ったとき、1度声をかけてみようって思いながらまだ実現できてないんだけどね…。




「その遥ちゃんがさぁ、バレンタインの日に仙崎に本命のチョコを渡したんだよっ。放課後の人が多い靴箱の前でね、ずっと好きでしたって‼」



あのときは野次馬がすごかったんだから!

なんて目をギラギラと光らせるみっちゃんは、興奮ぎみに鼻息を荒くさせていた。



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