この手だけは、ぜったい離さない



「まぁ結局のところ、遥ちゃんもフラレたみたいなんだけどね。それでもまだ仙崎のこと、諦めてないって噂だよ」

「へぇ……南海さんって洋くんのこと、大好きなんだね」



フラレても諦めきれない……かぁ。

そうなんだ、洋くんはモテモテなんだぁ…。



でも洋くんには確か『心に決めた人』がいるんだもんね?

だから南海さんの告白も断ったんだろうな。



「そういうあかりはどうなの?仙崎のこと」

「へっ⁉私っ⁉」

「そう。好きなの?」



私が、洋くんのことを好き……?

一緒にいることが当たり前の存在だったから、今まで考えたこともなかったなぁ。



だって洋くんのことは、お互いに幼稚園児のころから知っていて。

まいにち登下校を一緒にしていたくらい仲がよくって。



私にとっては、そこにいて当たり前の存在だった。



だからなのか都会ですごした6年間も、思いだすのは洋くんのことばかり。

あのころのように、洋くんと一緒に登下校したいなって思うのはそればかりだった。



久しぶりに会った洋くんは、ヤンキーになっていてびっくりしたけど。

でも話してみると、洋くんはやっぱりあのころのままの優しい洋くんで。



見た目はすごく変っていたけど、中身は6年前となんにも変わらないなって思った。



一緒にいると心がぽかぽか温かくなってくることも。

楽しくって笑ってばかりなことも。



「うーん……いちばんの友達かな?」



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