この手だけは、ぜったい離さない



そういえば洋くん…。

今日はもう帰ったのかな。



2時間目の数学と、3時間目の英語の授業ではちゃんと教室にいたのになぁ。

って言っても、机に顔を伏せて寝ていたんだけどね……。



「あかり、なにぼーっとしてるの?早く帰ろうよ」

「あっ……ごめんごめん、みっちゃん。帰ろっ」



スクールバッグに急いでペンケースを放り込むと、教室から出かかっているみっちゃんの元に走った。



「あっ、そうだ。あかりにコレをあげようって思って忘れてたんだよね」



ふたり並んで廊下を歩いていると、みっちゃんがブレザーのポケットから取りだした何かを手渡してきた。

なんだろう……このくしゃくしゃな紙は。



「ん?なに……映画のチケット?それも2枚?」

「そうそう、お母さんに映画のペアチケットもらったんだけどね。私は予定があって行けそうにないから、あかりにあげるよ」



行けそうにないって……啓太くんと行けばいいのに。

って思ったけど、チケットの有効期限をみると明後日までじゃんか。



「ありがとう。って……一緒に行く人なんかいないんだけどね…」



私も早く、みっちゃん以外にも話せる友達を作らなきゃなぁ。


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