この手だけは、ぜったい離さない



「ああーっ!啓太くんだっ!久しぶりだねぇっ、宇月あかりだよ‼覚えてる⁉」



啓太くんは「うわぁびっくりした」なんて肩を揺らしたあと「覚えてる覚えてる」と笑いかけてくれた。



あれ……久しぶりの再会のわりにはそんなに驚いてない?

って思ったけど、啓太くんが「美月が言ってたとおりぜんぜん変わってないな」って言ったから。

きっとみっちゃんから「あかりに会ったよ」って聞いてたんだろうなぁ。



「宇月にはよく肩や背中を殴られたからなぁ。よーく覚えてるわ」

「あはは……だってそれは、啓太くんが洋くんにイジワルするからだよ」



そんなやりとりをすぐ隣で聞いていたみっちゃんに「啓太とあかりはよくケンカしてたもんね」ってクスクス笑われた。



「聞いてくれよ美月。宇月なんか転校する前日にわざわざ俺ん家まで来てさぁ、ぜったいに洋くんをイジメるなよって脅してきたんだぞ?」

「あはははは、あかりらしいねぇ」



だって……洋くんが心配だったんだもん。

私がいなくなったら、洋くんは啓太くんに泣かされっぱなしなのかなぁって。

そう思うといてもたってもいられなくなって、遠い啓太くんの家まで走って行ったんだよね。



今だからこそ笑い話しだけど、当時の私は必死だったんだから。



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