この手だけは、ぜったい離さない



「じゃあそろそろ私は帰ろうかな、また明日ね。みっちゃん、啓太くん!」

「えっ……でもあかり、今日は一緒に帰るって約束したじゃん」

「せっかく啓太くんが帰ろって誘ってくれてるんだから、みっちゃんは啓太くんと帰りなって」



啓太くんの方にどん、とみっちゃんの身体を押すとふたりの肩が触れ合った。



「え?宇月と帰る約束してたのか?それならまた今度でも……」

「いいのいいの!私、啓太くんとみっちゃんのことを応援してるんだから。だから今日はふたり仲良く帰りなよ、ねっ?」



みっちゃんに「ごめん」と謝られ、笑顔を返した私は手を振りながらふたりのそばを離れた。



くぅぅ……いいなぁいいなぁ羨ましい。

私も彼氏がほしくなってきちゃった…。



勉強ばっかりじゃなくて、男の子と少しは話したりすればよかったかな…。

って、特に話したい男の子なんていなかったんだけどさ。

地味な中学校生活を思い返しながら、深いため息を洩らした。



そんな私はまたひとりで校門をでて、とぼとぼとバス停に向かって歩く。

すると校門を出てすぐに見えてくるバス停の前に、洋くんの姿を見つけた。



あっ、洋くんだ。

ちょうど映画のペアチケットを渡したいな、って思ってたからいいタイミング。



……でも、洋くんの隣には違うクラスの茶髪の男子生徒がふたりもいてなんだか声をかけづらい雰囲気。



< 64 / 228 >

この作品をシェア

pagetop