この手だけは、ぜったい離さない
「悪い悪い、ちゃんとあとから行くから。急用ができたんだから仕方ないだろ?」
「急用って、お前その子と一緒に帰りたいだけだろーがっ」
タツヤくんに右肩を殴られた洋くんは「いてぇなバカ!」なんて言いながらも笑っていて。
カズくんも笑いながら「お前ちゃんとあとで来いよな」って、今度は洋くんの左肩を殴って。
その姿がほんとに仲が良さそうだったから、思わず笑ってしまった。
「でも……洋くん、約束してたんでしょ?本当にいいの?」
私は洋くんと一緒に帰るのは、楽しいからいいんだけど…。
って、やっぱり周りの目は気になっちゃうんだけどさ。
でも……一緒に帰るくらいなら大丈夫だよね?
洋くんのことを好きな女の子たちを、怒らせちゃったりしない……よね?
だって洋くんと私は友達だもんっ。
それに一緒に帰るなんて、ずっと昔からしてきたことじゃんっ!
「本当にあとで行くから大丈夫だよ。俺は今はあかりと一緒に……」
洋くんはそう言いかけたところで、はっと途中で言葉を止めた。
「やっぱりなんでもない!」って顔を背けた洋くんは、照れているみたいだった。
洋くん……何を言いかけたのかな。
俺は今はあかりと一緒に……いたい、ってこと?