この手だけは、ぜったい離さない
「ううん……嬉しいよ、ありがとう洋くん」
「……いや、まぁ…うん。もしかしたらたまーに授業サボるかもしれないけど」
うぅ……洋くんの優しさについつい泣きそうになっちゃったよ。
洋くんは昔からそうだったよね。
行間休みとかお昼休みとか、私がひとりでいるのを見かけると、どこからともなくやってきて『一緒に遊ぼう』って声をかけてくれた。
私はそんな優しい洋くんに、なんども救われたんだっけ。
『次は、田の中〜。田の中〜。お降りのさいは……』
私と洋くんを乗せたバスは、その名のとおり一面に広がる田んぼの中にある停留所でとまった。
そこで降りた私と洋くんは、住宅街のある方向へむかって歩きはじめた。
「なぁ、あかり。この道をまっすぐ行った先に小せぇ駄菓子屋があったの覚えてる?」
「あっ、それって小学校のすぐ近くにあったお店だよね?」
『はなや』って名前の駄菓子屋さん。
なんで駄菓子屋さんなのに『はなや』って名前なんだろうって、ずっと疑問に思っていたんだけど。
『はなや』っていうのは、駄菓子屋さんを経営している70歳くらいのお婆さんが『花家』っていう名字なんだってお母さんに教えてもらったんだ。