この手だけは、ぜったい離さない



「そうそう、あの店来月にたたむんだってな。花家の婆さんが亡くなったからって」

「えっ、そうなのお婆ちゃん亡くなったの⁉」



『はなや』は洋くんとも、なんどもオヤツを買いに行った思い出の場所。

『いらっしゃい、あかりちゃん』ってお婆ちゃんが笑顔で迎えてくれたことはよく覚えてる。



「うん、先月のことだったかな。癌だったらしい。婆さんが入院中も今も爺さんが経営してるらしいけど、そんな爺さんも入院するからって」

「そんなぁ……寂しいなぁ」



お母さんに100円玉をもらうと、ウキウキしながら行ったはなや。

お婆ちゃんと世間話しをしたはなや。

洋くんと一緒に、遠足のおやつを選んだはなや。



思い出がたくさん詰まった場所がなくなってしまうんだなぁ、って思うと胸がぎゅうっと痛くなった。



「ねぇ、洋くんっ。今からはなやに寄ってもいい?一緒に行こう?」

「そりゃあ別に構わないけど?」



私と洋くんは住宅街を通り過ぎ、小学校の方向へむいてまっすぐに進む。

10分くらい歩いていると、道の脇に古びた木造の住宅が見えてきた。




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