この手だけは、ぜったい離さない
「あっ、見えた見えた!あの2階建ての家っ!懐かしいね、洋くん!」
はなやは、店舗兼住宅なんだよね。
だからいつもお婆ちゃんは2階の住宅の方にいて、お会計のときは会計カウンターの上のベルを鳴らしてお婆ちゃんを呼ぶっていうシステムだったんだよね。
「そうだな。あかりが毎回、小せぇヨーグルトのお菓子買ってたことだけやけに覚えてるわ」
小さいヨーグルトのお菓子、ね。
500円玉くらいのサイズで、木製のスプーンもついていたあのお菓子ね。
甘酸っぱくて大好きだったんだよねぇ。
「入ってみようよっ」
6年ぶりだからドキドキする。
遠慮がちにガラス製の扉を横に滑らせた。
するといちばんに視界に入ってきたのは、四畳半ほどの狭い空間に、壁に沿うようにしてコの字型に置かれている陳列台。
その上には、所狭しとチョコやラムネやビスケットなんかが並んでいる。
「はぁぁあっ……懐かしいっ!洋くん、見てみて!このブドウのフーセンガム、よく風船つくって遊んだよねっ」
「あぁ……うん、つーかふたりで入ると狭い…」
「……うん、確かに狭いね」