この手だけは、ぜったい離さない
「あかりちゃんの元気な姿を見たら、婆さんもきっと喜んでただろうねぇ」
「会いたかったから本当に寂しいなぁ…。お爺ちゃんは?入院するって聞いたけど具合は…?」
そんな世間話しをしばらくしたあと「あかりちゃん、お会計しようか?洋くんはもうとっくに出て行ってるよ」と言われて。
はっと後ろを振り返ると、いつの間にか洋くんの姿がなくなっていた。
もう……洋くんってば出るなら何か一言教えてよぉ。
「うん、じゃあこのヨーグルトのお菓子3つと……」
他にも何か買おうかなって、もう一度店内に目を配らせた。
「あっ、これこれ!洋くんが好きだったやつだ!」
この紺色の四角いパッケージに入っていて、タバコみたいな形をした棒状のラムネ。
甘いものが苦手な洋くんが、唯一食べられたお菓子がコレなんだよね。
洋くんはこのお店に来るたびに、このお菓子を買っていたことを思いだした。
「お爺ちゃん、このラムネもくださいっ」
「じゃあ、それも合わせて97円だよ。わざわざ来てくれてありがとう、あかりちゃん」
ヨーグルト3つとラムネが入った小さなビニール袋を手に、駄菓子屋を出てすぐのところでしゃがみこんでいる洋くんの後ろ姿が見えた。