この手だけは、ぜったい離さない



「もうっ、洋くんってば出るなら教えてよぉ」

「あぁ、ごめんごめん。楽しそうに話してたから邪魔したくなかったんだよ」



そう言ってゆらりと立ちあがった洋くんがぱっと振り返ったとき、その右手にタバコがあることに気付いてしまった。



「ああーっ!洋くんっ、それっ!タバコじゃんかっ!」

「え?あー……うん、タバコだけど?」



半分ほどしかないタバコを口に含んだあと、煙を吐きだした洋くんは「それが何?」って顔で私を見ている。



いやいやいや……。

洋くんにとってはタバコを吸うことは当たり前なのかもしれないけどっ。



いやいやいや……。

そんなのダメに決まってるでしょ!



「タバコなんて身体に悪いから吸ったらダメだよ、洋くん!」



タバコは未成年だからダメ。

っていうことよりも、健康な身体を害してしまうから嫌いなんだ。



「んなもん大したことねぇって。大袈裟だよ」

「タバコには50種類以上の発がん物質が含まれてるんだよ!その他にも200種類以上の有害物質とか!タバコをずっと吸ってるとね、発がん性もあがるし寿命だって10年も縮まるんだよ!」

「お……おぉ、やけに詳しいなぁ」



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