この手だけは、ぜったい離さない



「……って言いたいところだけど、土日はバイトだから無理か」



あぁ……うん。

そういえば土日は、とび職をやってるって言ってたな…。



洋くんの何気ないひとことで顔の熱が一瞬にして冷めてしまった。



「でも、ありがとうな。タツヤとカズにあげると喜ぶわ。アイツらはどうせ暇人だからな」

「う……うん、それはよかったぁ」



洋くんと映画かぁ…。

こうして一緒に帰るだけでも楽しいんだから、休みの日に遊んだりするともっと楽しいんだろうなぁ。

なんて……ちょっぴり残念。



「でも、洋くんは本当にすごいね。土日だけとび職やってるって言ってたけど、やっぱり大変でしょ?高いところとか怖くないの?」

「大変っつっても、親父の手伝いをちょこっとしてるくらいだからなぁ。高いところは別に平気だよ、本当に高いところは命綱してるしな」



そういえば洋くんのお父さんって、とび職人さんだってずっと前に聞いたことがあったなぁ。

なるほど、洋くんはそんなお父さんと一緒に働いてるってことだ。



でも命綱って……どれだけ高いところにのぼるんだろう…。

ほんの少し考えただけでも怖いよ…。



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