この手だけは、ぜったい離さない
洋くんと話すのってやっぱり楽しいから。
1時間っていう少しの時間でも、たくさん笑っていられるんだ。
「あっ、じゃあせっかくだからお昼ごはんにサンドイッチでも作って持って行くよっ!一緒に食べよ?」
「マジでっ⁉いいのか⁉食べるっ!」
勢いよく立ちあがった洋くんは、目をきらきらと輝かせていてすごく嬉しそう。
「やべぇ嬉しい」って連呼している洋くんを見ていたら、なんだか私まで嬉しくなってきちゃった。
「うんっ。たくさん作るからいっぱい食べてね!洋くんのお父さんのぶんも作っていくからね」
「おうっ!……って、親父のぶんも作るのかよ…」
「えっ?どうしたの?お父さんってサンドイッチ嫌いなの?」
あれ……洋くんってば、明らかにテンションが下がっちゃったけどどうしたのかな?
ついさっきまで、あんなに嬉しそうにニコニコ笑ってたのになぁ?
「いや……嫌いじゃねぇと思うよ。うん、いいんじゃない?」
ははは、なんて乾いた笑い声を洩らす洋くんは、なんだかムリヤリ笑っているような気がするけど…。
バスが来てのりこむ時には「じゃあな」って笑いかけてくれたから、やっぱりいつもどおりの洋くんだなって思った。